本日も医療施設への空爆について書きたいと思います。
昨日は、どれぐらいの医療施設が被害を受けているのか?なぜ医療施設を標的とするのか?という疑問について、具体的な数字とともにお伝えしました。
ご覧になられていない方は、そちらの記事もご覧ください。
このブログでは、誰が攻撃しているのか?医療施設への攻撃は許される行為なのか?という点についてお伝えしたいと思います。
この記事では、病院も含めて「医療機関」という表現に統一して表現します。
前回は、医療施設が攻撃対象となることにより、医療サービスが提供できなくなり、一般市民や医療従事者が被害を受けていることをお伝えしましたが、誰が医療施設を攻撃しているのでしょうか。
誰が医療施設への攻撃を行っているのか?
PHRは、シリアでの医療施設への攻撃のうち、90%の攻撃がシリア政府軍によるものとしています。
前線に近い医療施設は、ミサイルによる攻撃を受けることがありますが、医療施設への攻撃は、主に空爆により行われています。
この他に攻撃主体に関する統計データがないため、正確さについての評価は難しいですが、反政府勢力(自由シリア軍、クルド系勢力、イスラム国)は戦闘機を持たないため、可能性のある数字だと考えます。
医療施設が攻撃されていること自体を懐疑的に考える方もいらっしゃいますが、衛生画像を利用した調査も行われており、複数の医療施設が攻撃を受けていることが明らかになっています。
医療施設への攻撃が、主に政府によって行われているようですが、この様な行為は国際法で許されるのでしょうか?
国際法で許されているのか?
医療施設への攻撃は、国際人道法の違反であり、戦争犯罪と見做される可能性があります。
具体的には、以下の行為に該当する場合、戦争犯罪になる可能性があります。
– 故意に攻撃した場合
– 攻撃目標が軍事的性質のものか、民事的性質のものかの適切な確認を怠る過失があった場合
– 軍事的脅威と識別した対象に過剰に応酬した場合
– 識別された軍事的脅威に過度に応酬した場合
– 攻撃を事前に警告しなかった場合(MSF)
ほぼ全てに該当している気がします。
「攻撃を事前に警告しなかった場合」という点に限ってみても、シリアの医療施設が攻撃を受ける際、事前警告があったという話しは聞いたことがないため、戦争犯罪に当たることは確実だと考えます。
更に詳しい情報については、国境なき医師団ホームページに、日本語で記載されていますので、そちらを参考にしてみてください。
さらに、シリアで起きている医療施設への攻撃については、国連決議2286などで、強く非難されています。
同決議は、国連加盟国80カ国が共同提案者となり採択した国連決議です。
まとめ
まとめると、
シリアでの医療施設への攻撃の多くは、シリア政府軍によるものである。
同攻撃は、医療施設を意図的に攻撃対象としている。
国際法により、医療施設への空爆は禁じられており、戦争犯罪に当たる
シリア政府による医療施設への攻撃は、それを非難する国連決議が採択されている。
医療施設は、治療を必要とする人々が利用する施設であり、また、医療行為を行う医療従事者が働いている施設です。
その施設への攻撃は、卑劣極まりない行為です。
これは、攻撃主体が、政府軍であろうと、反政府勢力であろうと同様です。
戦略としてどれほど有効であろうと、実行されるべき行為ではありません。
シリア国内で医療支援を行う団体(UOSSM)が、医療施設に対する攻撃に関する非難声明への署名を呼びかけています。
一つ、より多くの人々が反対の意思を表明することで、この様な行為を止めるきっかけとなり得ます。
オンラインで署名することもできます。
是非とも、一度ご覧ください。
最後まで読んでいただきありがとうございました。
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関連記事:
シリアでの病院への攻撃とその理由 (1)
参考資料:
Assessing the status of medical facilities in Syria (AAAS)
Doctors in Danger Campaign (2017.11)