東グータ地域に取り残された人々 (3)

支援物資を受け取る住民(シリア)
Photo credit: EU/ECHO/People in Need

前回、前々回に引き続き、東グータ地域についてお伝えしたいと思います。

まだご覧になられていない方がいらっしゃいましたら、過去記事(前回前々回)を読んでいただけると、理解しやすいかと思います。

”包囲”の程度は?

東グータ地域では、人やモノを通すことができる場所は2ヶ所ありました。

1)ワフィディーン検問所と、2)ダマスカス郊外に張り巡らされたトンネルです。

ワフィディーンは、政府軍が外側、反政府勢力が内側を管理しています。

政府軍にとっては、東グータ地域は、”包囲”している場所であるため、人やモノの往来を許していませんが、検問所の担当官レベルでは、高額の通行料(賄賂)を渡せば、人やモノを往来させることができる環境でした。

もう一つは、ダマスカス郊外に張り巡らされたトンネルを利用し、東グータ地域内外を往来するという方法です。

このトンネル網は、2017年2月にシリア政府軍が進軍したことで遮断され、利用することができなくなりました。

また、シリア政府は、援助機関が人道支援目的で東グータ内へアクセスすることも殆ど許可しなくなったため、域内の一般市民の置かれる環境は、更に厳しいものと成りました。

ワフィディーン検問所については、政府軍は勿論ですが、内側を管理している反政府勢力の指揮官も利益を得るために、搾取に加担してきました。

物資の経路が遮断されたこと、支援が届かないこと、政府軍と反政府勢力の搾取、という3つの要素が、東グータ地域内に住む人々の環境を悪化させてきました。

東グータ地域での死亡者数

東グータ地域では、どれぐらいの人が亡くなっているのでしょうか?

紛争下という環境のため、明確な死亡者数は分かっていない、というのが答えです。

ただ、推計することができる統計は存在しています。

SRMDは、シリア紛争での死亡者数に関する報告書を公開しています。

この報告書によると、東グータ地域の位置するダマスカス郊外県での推計死亡者数は、2016年4月30日までで34,816人で、シリア国内で最も死亡者数が多い県とされています。

アレッポ県が31,257人で、2番目に亡くなった方の多い県とされています。

両県ともに、“包囲”された地域があり、過去に大規模な地上戦と空爆が行われた地域です。

ダマスカス郊外県については、同様に包囲されているヤルモックキャンプがあります。

ヤルモックと東グータ地域の人口比から考えて、34,816人の多くは、東グータ地域の死亡者であると考えられます。

紛争下では、死亡者数の統計については、正確な統計を得ることが難しいです。

私が調べたところ、情報源により調査方法も異なり、ばらつきがありました。

上記の数字は、ご参考までの情報としてご理解いただければと思います。

まとめ

簡単にまとめます。

  • 東グータ地域への輸送経路が遮断されたこと、支援が届かないこと、政府軍と反政府勢力の搾取、という3つの要素により、地域内に住む人々の生活環境が危機的な状況となった。
  • 東グータ地域での一般市民の死亡者数について、明確な数字が出ていない。
  • 一部統計データを基に、約34,000人の方が亡くなっていると想定することができる。

最後までお読みいただきありがとうございました。

関連記事:
東グータ地域に取り残された人々 (1)

東グータ地域に取り残された人々 (2)

参照:
Syrian Revolution Martyr Database

Conflict in Eastern Ghouta (CAPS, 2017.11.15)

Eighth Quarterly Report on Besieged Areas in Syria August – October 2017 (Siege Watch, 2017.10)

The man-made disaster in Syria’s Eastern Ghouta (IRIN, 2017.12.19)

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