シリアへの「越境(cross-border)」支援を認める国連決議が採択

Photo credit: UNRWA/Taghrid Mohammad

2017年12月19日、国連安全保障理事会は、シリアでの人道支援を目的とした周辺国からの「越境(cross-border)」について、承認する国連決議2393を採択しました。

この決議により、周辺国(トルコ、イラク、ヨルダン)からの人道支援を続けることができることになります。

この決議は、2014年7月に採択された国連決議2165を更新したものです。

このニュースについて、気になりそうな疑問について答えていきたいと思います。

この国連決議がないとどうなるのか?

シリア政府が支配する地域「以外」に住んでいる人々は、支援を受けることができなくなります。

シリア国内では、各勢力(シリア政府軍、反政府勢力、クルド系武装勢力、イスラム国)が戦っています。
※この記事では、シリア政府軍以外の3勢力を「反政府勢力」と呼びます。

各勢力の支配する地域には、武装勢力に属さない一般市民が住んでいます。

支配勢力がシリア政府ではない地域では、食料や燃料など、生活に必要な物資・サービスへのアクセスが限られます。
(シリア政府の支配する地域と、それ以外の地域を比べた場合に、後者の方が支援ニーズが高い、という意味である。)

そこで、シリア政府が、政府支配下にない地域にいる住民への支援は許さないとした場合、反政府勢力、クルド系武装勢力、イスラム国の支配する地域に住む人々は、支援を受けることができなくなります。

一般市民は、自ら好んで武装勢力の支配地域にいる訳ではありません。

例えば、イスラム国の支配する地域では、一般市民は、その地域から逃げることは許されません。見つかった場合、捕らえられ、処刑されるケースも報告されています。

国連決議2393が採択されたことで、反政府勢力が支配する地域の一般市民も、人道支援へのアクセスが可能となります。

この決議は、いつまで有効なのか?

12ヶ月有効とされています。そのため、2019年1月10日以降の適用については、更新について改めて採択されなければいけません。

12ヶ月という期間がどのように決定されたのかは分かりませんが、それまでに和平協議に進展があることを望んでの期間設定なのかもしれません。

国連決議2165が採択された2014年7月と比べると、戦況が変化したことが影響しているかもしれません。

具体的には、2014年7月時点では、自由シリア軍を始めとする反政府勢力が優勢だったところ、2015年中旬にロシアが軍事介入してから、政府軍が有利な状況に転じました。

今後も、シリア政府にとって有利な戦況が続くことが見込まれる状況ですので、1年以内に各勢力間で何らかの和平合意に至り、全ての人道支援は首都ダマスカスからに限る、という決定がなされることもあり得ると考えています。

そうなった場合、1年後にこの国連決議は更新されないことになるでしょう。

明日も、国連決議2393をテーマとした記事を書きたいと思います。

関連記事:
シリアへの「越境(cross-border)」支援を認める国連決議が採択2

参照:
Adopting Resolution 2393 (2017), Security Council Renews Authorization for Cross‑Border, Cross‑Line Humanitarian Access to Syria (UN, 2017.12)

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