シリアへの「越境(cross-border)」支援を認める国連決議が採択 2

昨日、国連安全保障理事会で、シリアでの人道支援を目的とした周辺国からの「越境(cross-border)」を許可する国連決議2393が採択されたとお伝えしました。

この国連決議について、本日もお伝えしたいと思います。

シリアへの越境支援と言っても、支援に携わっている人でない限り、どの国からの越境支援なのか検討がつかないと思います。

そこで最初の疑問です。

どこからの「越境(cross-border)」支援が許可されているのか?

トルコ、イラク、ヨルダンにある、4ヶ所の国境検問所からの越境が許可されています。

具体的には、以下の4ヶ所です。
1.バブ・アル・ハワ(トルコ)
2.バブ・アル・サラム(トルコ)
3.ヤーロビイェ(イラク)
4.ヌサイブ(ヨルダン)
※2017年12月時点

上記4ヶ所が、”公式”な越境ポイントになりますが、シリア側の治安が悪化した場合には、政府の判断で閉じられます。
その場合、その国境を使っての物資・人の往来はできなくなります。

例えば、2017年前半、トルコのバブ・アル・サラム国境では、シリア側で反政府勢力、クルド系勢力、”イスラム国”との間の戦闘が激しくなったため、6ヶ月以上、国境が閉じられ、支援物資を運ぶことができませんでした。

管轄する主体も各国で異なり、国によっては、政府軍ではなく諜報機関が国境往来についての調整を行っている場合もあります。

実際のところ、上記の他にも”非公式”の物資供給ルートもあります。人の場合は、不法越境を行うルートもあります。

シリア紛争が始まった2011年頃は、各国の国境管理は緩く、このような越境が難しくない状況でしたが、2017年現在は、非公式のルートを利用するのは難しくなっています。

余談になりますが、2015年以前に、日本人のジャーナリストの方が、トルコ側の密入国斡旋業者を使って不法越境しシリア国内で取材していたことは、有名な話しです。

次に、もし隣国からの支援ができない場合、シリア国内に住む人々にとってどれほどのインパクトがあるのかについて触れたいと思います。

周辺国からの越境ができなければ、どれぐらいの人達が困るの

国連の発表によると、シリアでは、推計1,300万人が支援を必要としています。

紛争前の人口は、約2,200万人と言われていますので、人口の半数以上が支援を必要としていることがわかります。

うち、560万人が喫緊の支援が必要であると言われています。

この多くが、周辺国から越境してでしかアクセスできない地域に住んでいます。

国連の報告では、食料価格は、紛争前に比べて約8倍にもなっており、食べものを手に入れることさえも難しい環境になっています。

生活の糧を失った人々は、生き延びるために、子どもを早期結婚に出す、児童労働をさせるなどの手段に出ています。

国連決議2393が採択されなかった場合、この人達は支援を受けることができなくなり、この人達の生活環境は更に過酷なものになります。

2つの記事を通して、国連決議2393について説明してきましたが、その重要性についてご理解いただけましたでしょうか。

シリア紛争について、日本で報道される機会が減ってきていると思いますので、このブログからの発信を通して、皆さんの目に触れる機会を増やすことができればと思っています。

関連記事:
シリアへの「越境(cross-border)」支援を認める国連決議が採択 2

参照:
Humanitarian Needs Overview 2018 (UN, 2017)

Adopting Resolution 2393 (2017), Security Council Renews Authorization for Cross‑Border, Cross‑Line Humanitarian Access to Syria (UNSC, 2017/12.19)

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